研究報告

 平成29年度 研究課題

平成29年度 都留文科大学学術研究費交付金
研究題目1:オタク文化の発信地アキバ(秋葉原)の言語生態研究
 通称アキバと呼ばれる秋葉原駅周辺部は、いわゆるオタク文化の発祥地となっている。以前は、電気関係を扱う店舗が並んでいることで有名であったが、現在はアニメやアイドル関係の店舗が多くなり独自の文化を発展させている。街並みには、アニメのキャラクターが描かれ、特徴的な街の風景となっており、特殊な文字表記やアキバ用語が氾濫している。本年度は、街にあふれる文字表記を撮影し、言語景観からアキバ文化の特徴を分析する。
研究題目2:首都圏方言の消失と方言意識に関する研究
 早野(1992)「語彙」『地域言語と文化-玉造のことば』において語彙集(方言辞書)を編纂した。その語彙集には「気づかない方言」だけでなく「気づかない共通語」も多く含まれており、昨年、早野(2016)「気づかない方言」『はじめて学ぶ方言学』で報告した。「シャベル(話す)」「テッペン(頂点)」「カラッポ(空)」等の文字言語と異なる語形のものや「ギヤマン(ガラス)」「ジキ(すぐ)」「サカシー(利口)」等の共通語において新旧があるものなどが方言形として意識されている。この方言・共通語意識が方言変化の大きな要因であると筆者は考える(早野(1996)『首都圏の言語生態』)。本研究では、まず関東北部(特に茨城県南部)で過去に編纂された方言集を集めて、年代順に整理し、各資料の共通項目を抽出することにより方言形の消失過程を明らかにする。
平成29年度 都留文科大学特別教育研究費交付金
研究題目3:学校教育における外国人児童生徒の日本語支援に関する研究
 近年、JSL(Japanese as a Second Language)年少者およびFJB(Foreigner of Japanese Birth)年少者が急激に増加している。FJBとは日本で生まれ育ってはいるが、親が非日本語話者(片親が日本語話者のケースを含む)で、言語形成期において日本語以外の言語とも接触してきた話者のことである。早野を代表とする研究グループでは、宮崎県および栃木県をフィールドにJSL、FJB年少者に対する実態調査を2004年~2012年にかけて行った。既に研究グループとして11編の研究論文をまとめており、ある程度の把握ができるようになった。さらに、近年はJSL、FJB年少者に対する言語能力調査も行ってきた。言語能力に関しては、小学校高学年で用いられる教科書教材(高学年社会科)の語彙について日本人児童(日本語母語話者)と比較したのであるが、各属性で大きな違いが見られ、メタ言語能力(日本語説明能力)に関しても日本人>FJB>JSL(p<0.1で統計的に有意)の結果が得られた。教科書語彙の理解度は学力に直結する大きな問題である。本研究は、これまで行ってきた調査結果をもとに、日本語支援のための教科書教材作成を目的とする。対象は、外国人児童生徒にとって難易度が高いとされる高学年の社会科教科書である。今年度は、東京都多摩地区(特に東大和市・武蔵村山市)をフィールドに外国人児童生徒の実態調査を行う。東大和市・武蔵村山市はJSLが増加し、市の小学校教諭らから支援要請を受けている。JSL、FJBの実態調査を行えば、宮崎・栃木データとあわせて、より完成度の高い教材が作成できるものと期待できる。 本研究は、松井洋子(東京福祉大学)および多摩地区小学校教諭らとの共同研究である。
 
 早野慎吾 研究業績 都留文科大学教業績一覧参照 https://www.tsuru.ac.jp/guide/professor/